ともたろうファミリーと夢の旅 -23ページ目
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第九章 ナンパ?

彼は財布をしまうと、今度は、夫はいるのか、結婚しているのかと聞いてきた。そのとき私は、離婚したばかりであったが、説明するのは大変なので、
「ノー。」
とだけ答えた。すると、彼はしきりに、電話番号を聞いてきた。こんなところでナンパされるとは、私もすてたもんじゃないかもね、と思ったが、彼の左の薬指にはキラキラ光る指輪があったので、彼は結婚しているのだろう。アラブは重婚もオッケーなんだっけ?などと考えているうちに、着陸のアナウンスが流れた。

第八章 金持ち?

 しばらくすると、彼は、一万円札を取り出し、両替してくれないかと言った。しかし、私は旅行からの帰りで、持って行ったお金は使い果たしていたため、希望に添えなかった。ちなみに、旅行に行くとき、私は、あまりお金を持ち歩くことはしない。「何かあったら、カードがあるさっ」と気楽に考えているからだ。
残念そうに、彼が一万円札を財布にしまうとき、私は見てしまった。札束を。ドルに、円に、カードの数々。アラブ人は金持ちなのだ。両替もしてあげられない私とはえらい違いだ。いつか私も金持ちになって、札束を持ち歩いてみよう、とこの時から思っているが、そんなことができる気配はまだない。
 

第七章 仕事で来日

 アラブ人男性は、黒い瞳を輝かせながら、話しかけてくる。英語も、ゆっくり、丁寧に話してくれるため、なんとか分かる。彼は、仕事で日本に行くところで、カーペットを売る仕事をしているそうだ。
「それにしても、いろいろな言葉が話せてすごいですね。」
と彼を褒めると、
「アナタ、ニホンゴダケ?」
と驚いたように言われ、返す言葉がなかった。よおし、今度こそ、本当に、英語を勉強しよう。
 

第六章 中学レベル

残ったのは、アラブ人だけだ。さっきから、英語でしゃべってはいたが、私が出来るのは中学生程度の英語くらいで、べらべら話されても、きょとんとしてしまう。
以前も、英語で話さなければならない場面に遭遇したことがある。香港に行った時のことである。滞在先のホテルで友人が蜂に刺されるというハプニングがあった。私は、フロントへ薬をもらいに行ったのだが、日本語を話せる人がちょうど留守であったため、仕方なく、
「Bee」
と言いながら、蜂のマネをし、係の人に苦笑されてしまった。そのときも、日本に戻ったら絶対に英語を勉強してやると誓ったはずだった。なのに、そんな決意もすっかり忘れ、また、のほほんと旅にでている自分を非常に悔いた。
 

第五章 恐るべしアラブ人

またも台湾人女性がアラブ人男性に何かを伝えた。すると、アラブ人男性は、私に向かって、
「アナタ、ナゴヤ?」
と今度は日本語を使って話しかけてきた。彼は日本語も少し話せるらしい。恐るべし、アラブ人。私は、とっさに、
「ノー。」
と答え、後から、ああ日本語で答えればよかったのか、と一人照れ笑いを浮かべた。
台湾人女性は名古屋へ行くところらしく、私が、名古屋に詳しくないと知ると、彼女は私に興味を示さなくなった。そして、音楽を聴いたり、雑誌を見たりと、自分の世界に入っていった。

第四章 トライアングルの出来上がり

なんとか席に着くと、すぐに窓際に座っている台湾人女性が話しかけてきた。しかし、台湾語はひとつも分からない。台湾語は分からない、と英語で言ったが、それでも、話しかけてくる。彼女は英語が分からないようだ。
彼女のマシンガントークに困り果てていると、見かねたアラブ人男性が、台湾語を英語に訳してくれた。それによると、台湾人女性は、私が、どこへ行ってきたのか聞いていたらしい。
なんだ、そうだったのか、と思っている間にも、彼女は話しかけてきた。それをまたアラブ人男性が英語に訳し、私が、しどろもどろの英語で答えたことを、また、台湾語に訳して伝えてくれた。そんなことを繰り返して、私達の間には、何とも奇妙なトライアングルが出来てしまった。

第三章 なんでこの席?

やっと空港に到着し、すぐに搭乗手続きを行った。到着したのが遅かったため、友人とはバラバラの席になった。まあ、仕方がないだろう。寝てしまえばすぐに日本だ。私達は、ガイドさんと別れを惜しむ暇もなく、さっさと飛行機に乗り込んだ。
 友人とは別々に座席を探し、座ろうとした瞬間、私は凍りついた。「真ん中の席だ。しかも、この人たちは何者?」私の席の両隣に座っていたのは、台湾人の女性とアラブ人の男性だったのだが、このときには、彼らが何者か、さっぱり分からなかったのだ。ふと、友人を見ると友人は、日本人に囲まれて座っているようだ。
「エクスキュウズミー。」
私はとりあえず、アラブ人男性に言った。すると、アラブ人男性はものめずらしそうに私を見上げ、すぐに、にっこり微笑みながら通してくれた。

第二章 楽しく帰るはずだった

正月気分もひと段落した、一月の連休を利用して、友人と二人、日ごろのストレス解消になればと、台湾旅行に出かけた。おいしいものを食べ、エステにマッサージ、買い物に観光という極楽三昧のツアーを見つけ、参加したのだ。ツアーと言っても、客は私達しかおらず、ガイドさんも、車も完全に貸切状態というラッキーなものだった。幸いにも、天候にも恵まれ、久しぶりに楽しい時を過ごした。あとは、たくさんのお土産と笑顔と共に帰国するだけだったのである。
雲行きが怪しくなり始めたのは、帰国の直前である。私達をのせた高級車は空港に向かっていた。スムーズに行けば、出発の二時間前には到着するはずだ。空港に着いたら、ガイドさんとの別れを惜しみ、その後は免税店でも見て歩き、出発の時間まで飛行機を見たり、今回の旅行について友人と語ったりして、ゆっくり過ごす予定だった。
しかし、そうはうまくいかなかった。旅にはアクシデントがつきものなのだ。急に車の運転手が前の車をあおりだした。運転手の荒い運転に驚き、どうしたのか問うと、ガイドさんは、困った顔で、
「彼は、割り込みをした車に腹を立てています。」
と教えてくれた。そして、運転手は、その車を道の真ん中で停車させると外に飛び出していき、大声で喧嘩を始めた。それは、ものすごい剣幕だったが、言葉が分からないため、私達は車の中で、その様子をじっと見ている事しかできなかった。
最初のうちは、すぐに収まるだろうと思い、気楽に友人と
「すごいね・・・。」
などと言っていた。しかし、しばらくしても、一向に喧嘩は収まらず、私達も次第に不安になってきた。私達はガイドさんに不安を訴えたが、ガイドさんは、
「ポリス・・・。」
と真剣な表情で言い、携帯電話を握り締めてはいるだけだ。電話を掛ける様子はない。飛行機の時間もせまってきている。私達は帰れるのだろうか。
私達の車の後ろには、渋滞もできており、ひっきりなしにクラクションが鳴らされた。運転手の周りは人だかりもできていたため、もう、喧嘩がどうなっているかも分からない。ガイドさんは、
「あの人はね、本当はいい人なのよ。」
と言ったが、はたして、「いい人」が客を乗せているのに、喧嘩などするのだろうか。
 運転手が戻ってきたのは、それから四十分後のことである。誰かが止めに入ったらしく、運転手も気が済んだのだろう。私達は、喧嘩を止めに入った勇者に、心の中で感謝し、拍手を送った。
 

第一章 はじめに

なぜ私がこの席に座っているの・・・。
台湾から成田に向かう飛行機の中。
右をみれば、中年の台湾人女性。左を向けば、年齢不詳のアラブ人男性。
台湾人のその女性が、台湾語でしきりに話しかけてくる。
しかし、何を言っているのやら、さっぱり分からない。
私が、「困ったな」という顔をしているというのに、彼女はお構いなしだ。

はじめに

なぜ私がこの席に座っているの・・・。台湾から成田に向かう飛行機の中。右をみれば、中年の台湾人女性。左を向けば、年齢不詳のアラブ人男性。台湾人のその女性が、台湾語で
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