第二章 楽しく帰るはずだった | ともたろうファミリーと夢の旅

第二章 楽しく帰るはずだった

正月気分もひと段落した、一月の連休を利用して、友人と二人、日ごろのストレス解消になればと、台湾旅行に出かけた。おいしいものを食べ、エステにマッサージ、買い物に観光という極楽三昧のツアーを見つけ、参加したのだ。ツアーと言っても、客は私達しかおらず、ガイドさんも、車も完全に貸切状態というラッキーなものだった。幸いにも、天候にも恵まれ、久しぶりに楽しい時を過ごした。あとは、たくさんのお土産と笑顔と共に帰国するだけだったのである。
雲行きが怪しくなり始めたのは、帰国の直前である。私達をのせた高級車は空港に向かっていた。スムーズに行けば、出発の二時間前には到着するはずだ。空港に着いたら、ガイドさんとの別れを惜しみ、その後は免税店でも見て歩き、出発の時間まで飛行機を見たり、今回の旅行について友人と語ったりして、ゆっくり過ごす予定だった。
しかし、そうはうまくいかなかった。旅にはアクシデントがつきものなのだ。急に車の運転手が前の車をあおりだした。運転手の荒い運転に驚き、どうしたのか問うと、ガイドさんは、困った顔で、
「彼は、割り込みをした車に腹を立てています。」
と教えてくれた。そして、運転手は、その車を道の真ん中で停車させると外に飛び出していき、大声で喧嘩を始めた。それは、ものすごい剣幕だったが、言葉が分からないため、私達は車の中で、その様子をじっと見ている事しかできなかった。
最初のうちは、すぐに収まるだろうと思い、気楽に友人と
「すごいね・・・。」
などと言っていた。しかし、しばらくしても、一向に喧嘩は収まらず、私達も次第に不安になってきた。私達はガイドさんに不安を訴えたが、ガイドさんは、
「ポリス・・・。」
と真剣な表情で言い、携帯電話を握り締めてはいるだけだ。電話を掛ける様子はない。飛行機の時間もせまってきている。私達は帰れるのだろうか。
私達の車の後ろには、渋滞もできており、ひっきりなしにクラクションが鳴らされた。運転手の周りは人だかりもできていたため、もう、喧嘩がどうなっているかも分からない。ガイドさんは、
「あの人はね、本当はいい人なのよ。」
と言ったが、はたして、「いい人」が客を乗せているのに、喧嘩などするのだろうか。
 運転手が戻ってきたのは、それから四十分後のことである。誰かが止めに入ったらしく、運転手も気が済んだのだろう。私達は、喧嘩を止めに入った勇者に、心の中で感謝し、拍手を送った。